本号のテーマ:社会保険料と住宅積立金の過少納付に関するリスク提示
「中華人民共和国社会保険法」、「住宅積立金管理条例」およびその他の関連法規によると、雇用主は自己申告の上、社会保険料および住宅積立金を全額、期限内に納付しなければならず、不可抗力など法律で定められた正当な理由がない限り、社会保険料および住宅積立金の納付の猶予または減免は認められていない。ただし、実務上、多くの企業が、「社会保険料のみを納付し、住宅積立金を納付していない」、または、「社会保険料と住宅積立金とも十分に納付していない」という誤った対応をしており、従業員の権利を侵害するだけでなく、企業自身を法的リスクに晒らしている。
近年、従業員の権利意識の向上および法律知識の普及が進んでおり、さらに社会保険料の徴収業務が税務当局へと移管されている状況を背景に、企業は規定に従って社会保険料と住宅積立金を完納しないことによる経営上のリスクがますます高まっている。本号では、関連する法規の根拠、北京市での具体的な計算例、違反時の法的結果、そして企業が取るべきコンプライアンス対応について解説し、企業にとって明確な法令遵守の指針を提供する。
01
社会保険料および住宅積立金の納付に関する法定義務基準
1、社会保険料
中華人民共和国社会保険法第58条によると、雇用主は雇用日から30日以内に、従業員の社会保険登録を社会保険機関に申請しなければならない。
これを怠った場合、社会保険料納付額の1~3倍の罰金が科される他、未納分の追納と未納期間中の延滞金(1日当たり0.05%)が求められる(社会保険法第86条)。
2、住宅積立金
「国務院住宅積立金管理条例」第15条および第20条によると、従業員を雇用した場合、雇用日から30日以内に登録を行い、全額を適時に納付しなければならず、滞納や過少納付をしてはならない。違反者は1万元から5万元までの罰金に処せられ、期限を過ぎても納付されない場合、住宅積立金センターは裁判所に強制執行を申し立てることができる(条例第37条、第38条)。
「北京市住宅積立金条例」によると、30日以内に登録することが改めて義務付けられており、口座開設や納付を行っていない企業にも罰金基準(1万~5万人民元)が適用されることが強調されている。
02
納付金額の計算に関する規定
社会保険料、住宅積立金はいずれも 「納付金額=納付基数×納付比率」で計算される。納付率は所在地の関連当局により定められ、システム上、固定値として設定される。よって、過少納付の原因は納付基数の計算にあることが多い。
社会保険料
社会保険法第60条:事業主は、従業員の賃金総額に応じて納付基数を申告しなければならず、隠蔽や申告漏れをしてはならない。社会保険料の納付基数に関する規定(労働社会保険センター通達[2006]第60号)では、納付基数は従業員の前年の平均月給を基礎とし、新入社員の場合は最初の月の賃金を基礎とすることが定められている。
住宅積立金
住宅積立金管理規則第15条および第20条:従業員は雇用後30日以内に拠出金の登録を行う必要があり、納付基数は従業員の前年の平均月給を基礎とすることが定められている。
国家統計局の「賃金総額の構成に関する規定」によると、納付基数に含めるべき項目は、時間給、出来高給、賞与、各種手当、残業代、特別な状況下で支払われる賃金などが含まれるが、社会保険料や従業員福利費は含まれない。
よって、社会保険料や住宅積立金の納付基数を算定する際には、基本給の他、各種手当、残業代、賞与などを含めて計算する必要がある。
03
社会保険と住宅積立金の計算に関する注意事項
①納付基数:一般的に、従業員の過年度の平均月給を基礎とし、基本給、各種手当、残業代、賞与などが納付基数に含まれ、また、所在地当局が毎年発表する上限と下限を考慮する必要がある。
②社会保険料率:所在地当局が毎年公表する各保険料率に基づく必要がある。
③住宅積立金料率: 5%~12%の範囲内で自由に選択できる。
04
過少納付によるリスク
1、社会保険料
「中華人民共和国社会保険法」第86条によると、社会保険料を期限内に全額納付しない雇用主は、以下のリスクに直面する。
社会保険料徴収機関は、社会保険料の期限内納付または不足額の追納を命じ、未納付の日から1日につき0.05%の延滞金を科す。期限を過ぎても未納の場合、関連行政部門は未納保険料の1~3倍の罰金を科す。
また、会社が社会保険料を全額納付していないことを理由に従業員が労働契約を解除した場合、会社は中華人民共和国労働契約法の関連規定に基づき、経済補償金の支払義務を負うことになる。
2、住宅積立金
「住宅積立金条例」第20条によると、会社は住宅積立金を期日までに全額を納付しなければならず、遅延や過少納付をしてはならず、もし企業が住宅積立金を全額納付していない場合には、以下のリスクがある。
従業員は、地元の積立金センターに通報することができ、事実が確認された場合、会社は未納分を追納する必要があり、さらに罰金などの行政処罰を受ける可能性がある。また、住宅積立金を過少納付している場合、従業員の住宅ローンなどの福利厚生に影響を及ぼす可能性があり、従業員の不満や労働争議を引き起こす可能性がある。
GTの提示:
①延滞金と罰金について、各地の実務運用にばらつきがあり、たとえば企業が自主的に申告した場合には、滞納金や罰金の減免を受けられる可能性があり、また、滞納金が未納の社会保険や住宅積立金の金額を上限として算定される地域もある。
②社会保険料と住宅積立金の追納方法について、各地の実務運用にばらつきがある。
・遡及追納の年数:一部地域では過年度分の追納ができず、また、直近2年度分のみを追納可能とする地域もある。
・遡及追納の対象:すべての従業員に対して追納が必要とされる地域もあれば、一部の従業員のみを対象に追納できる地域もある。
・遡及追納の範囲:企業負担分のみ追納すればよい地域もあれば、従業員の個人負担分もあわせて追納する必要がある地域もある。
過少納付による追納リスクは、企業が清算を予定している場合や大規模な労働争議が発生した際に顕在化しやすい。また近年では、従業員の権利意識の向上および法律知識の普及に伴い、企業が安定的に経営を続けている状況下でも、従業員から社会保険や積立金に関する疑問や要求が寄せられることが増えている。労働訴訟のリスクを可能な限り回避するため、企業は自社または専門機構を通じて、社会保険料および住宅積立金のコンプライアンス遵守状況を早急に整理、試算し、現地当局の監督方針に応じた適切な対策を講じるよう留意されたい。
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